浅野 裕哉 (Yuya Asano)English

ペアの生徒はロボットにどう教えるか

2人の生徒が一緒にEmmaに教える対話を、2つの観点から分析する:誰の言葉を共有するのか、そして解き方について合意しているのか

役割
研究の主担当
設定
生徒2人が一緒にEmmaに教える
手法
対話分析、アノテーション、回帰分析
所属
ピッツバーグ大学

この研究では、2人の生徒が一緒にEmmaに教える対話を分析しました。米国の大学生が、NAOロボットのEmmaに中学校レベルの比の問題の解き方を音声で教えるものです。このEmmaは、パターンマッチングで台本の応答を選ぶ対話システムでした。生徒1人が教えるLLM版のEmmaとは別の研究ですが、ここで得られた知見がその設計につながっています。

これらの対話を、2つの観点から分析しています。語彙的同調は、グループが最終的に誰の言葉を共有するようになるかを見ます。意味的な(不)一致は、生徒とEmmaが問題の解き方について合意しているかを見ます。

以下の例はすべて同じ問題からのものです:Emmaは2/3時間でバッテリーの1/20を使います。1時間では、どれだけ使うでしょうか。

観点1:語彙的同調

会話をしていると、人は相手の言葉を使うようになります。人同士では、これはラポール(信頼関係)の表れとされることが多いです。しかしティーチャブル・ロボットとの対話では、話はもっと複雑です。先行研究では、ロボットが生徒に同調するとラポールが高く、生徒がロボットに同調するとラポールが低いことがわかっていました。つまり、誰が誰に同調するかが重要です。ところが3者の会話では、既存の指標は隣り合う発話しか見ないか、個人の違いをまとめてしまいます。

そこで、共有表現(shared expression)に基づく指標を多人数の会話に拡張しました。ある表現は、誰かが初めて使ったときに導入され、何ターン後であっても全員が使った時点で確立されます。これにより、グループで共有された語彙への各話者の貢献を捉えられます。

Who said “two thirds” first?

    From a real session (Asano et al., AIED 2025). Some turns omitted. Green italic: Emma initiates the expression. Blue: students reuse it. Bold blue: every speaker has now used it, so it is established.

    観点2:意味的な(不)一致

    数学の問題には正しい解き方が複数あることが多いため、生徒とAIのパートナーは、どちらも正しくても食い違うことがあります。これを**解法の食い違い(solution-path conflict)**と呼んでいます。今回のセッションでは、生徒が教えている解き方をEmmaが読み違え、自分の解き方にこだわったときに食い違いが起きていました。問題ごとに、食い違いなし、解消された食い違い(生徒が自分の解き方とEmmaの解き方を明示的にすり合わせた)、解消されなかった食い違いの3つに分類してアノテーションしました。

    A resolved solution-path conflict

      From a real session. Some turns omitted. The students planned to halve 1/20 and then triple it; Emma proposed scaling by the ratio of 2/3 of an hour to 1 hour.

      An unresolved solution-path conflict

        From a real session. Some turns omitted. The students wanted the battery usage for 1/3 of an hour, then converted to decimals; Emma stayed with the ratio of 2/3 of an hour to 1 hour.

        これらの知見から、LLM版のEmmaは検証済みの別解をあえて示し、生徒が2つの解き方を比べられるよう導く設計になりました。

        その他の知見

        データのつくり方

        実験室・教室での研究を一貫して設計・実施しています。実験計画と検出力分析、IRBのプロトコル作成、実験セッションの運営、対話・音声データの収集、アノテーション、統計分析まで担当しています。解法の食い違いについてはコーディングスキームを作成し、2人目のアノテーターを育成したうえで、不一致を検討しながらスキームを改善し、Cohen’s κ = .72、Gwet’s AC1 = .83に達しました。

        共同研究者

        ピッツバーグ大学のDiane Litman、Erin Walker、Timothy Nokes-Malach、Adriana Kovashka、マギル大学のNikki Lobczowski。